読書の秋2025 PartⅡ 「人間の視野」

まぁ、一応秋らしくなって来て何冊か本を読んだので、忘れないうちに感想を書き置き。。

直近9月以降で読んだ本(読み返し含む)は、たまたま手に取っただけなんだけど、各本の中で語られている内容に、ちょっとだけ共通する部分があったので、その辺を備忘として。。

1冊目は、またまた日経新聞の8月の交遊抄キッカケで、中室牧子さんという慶応大学教授の方の寄稿を読んで、そこで触れられていたので、どんな内容だろう?と買った本。

 「原因と結果の経済学」

この「交遊抄」の中で、中室さんが、友人のカリフォルニア大学の津川准教授を紹介し、津川氏を激賞しているのだけど、その津川准教授と一緒に出版したというのが、この「原因と結果の経済学」という本らしい。
発刊されたのは2017年の2月なので、もう8年も前に出た本らしく、当時は、ビジネス書の販売ランキング1位になった様で。。

↓ 中室さんに紹介された津川氏のX(ツイッター)で、当該交遊抄の文章が紹介されています

↓「原因と結果の経済学」

内容としては、世の中「ビッグデータ」時代を迎えているけど、それらのデータの活用において、何かの事象の原因になっている(と思われる)情報は、よくよく分析してみると単に関係性があるだけで、必ずしも直接的な原因でない場合が多い。

よって、企業の戦略を考えたり、国の政策を策定・遂行する際には、その辺をしっかり捉えて行かないと全く成果が得られない事になる。もしくは、原因を見誤るので、適切な対策を打つ事が出来ない。なので、「因果推論」という方法論をよく理解して取り組む必要がある、という趣旨です。

分析事例として挙げているのは、「メタボ健診の受診が広がると国民の寿命は延びると思われているけど本当か?」、「テレビを見てばかりいる子どもは、学力が下がるのか?」、「女性管理職や取締役を増やすと会社の業績は伸びるのか?」など。。とにかく思い込みや通説に騙されないようにするのが大事、との意見。

特に、国の政策を考えるのには、ここで取り上げられているデータ分析の手法を生かしていく必要があるなと感じました。中央省庁の人は、改めて読み返してみるべきなのでは。。。

2冊目は、たまたま自分の書棚の本を出し入れしていて、入れ替えの為に取り出した「成長の限界」。 ↓


これ、スイスにある「ローマクラブ」というシンクタンクが取りまとめた内容を、ダイヤモンド社から1972年に発刊された本で、世に出て既に53年が経ってます。。

だいたい自分くらいのオジさん、オバさん世代だと、中学か高校の教科書にも出て来てたと思うので改めて紹介するまでも無いかもしれないけど、、

内容は、ざっくり「このまま人口が増え続けて、資源を消費し続けると、早晩これまでのような高成長が出来ない限界が訪れる」という主旨の本なんだけど、多分、学生時代に買って読んだのをそのまま持っていたんだと思う。
詳細はどのような事が掛かれてを忘れていたので、久し振り?にざっと斜め読みしてみました。

その中に、人間の視野を可視化したグラフが載ってました。(図1:当然、過去に読んだ事があるという記憶は無い。。)

これって、極めて重要な事を可視化している気がする。。

今日、自民党の総裁選で高市さんが新総裁に選ばれたが、この前の7月の参議院選挙もそうだけど、結局、大部分の人は、この図1で示している右上の象限の、「子供世代に影響が生じてくる」×「世界的」に関する問題に視野を向けることは無く、大部分が、左下の、「比較的直」×「家族や身近な生活」に関する問題にしか興味領域が持てないので、自ずと政策論議もそのような狭い視野の話に閉じてしまう。。

まぁアメリカにしても他の国々にしても大部分が同じ状況なで、日本だけが特殊な訳ではないが、このままだと何れにせよ、いずれどこかで立ち行かなくなるのは見えている。。

温故知新とはよく言ったもので、50年前の本でも新たな気付きを与えてくれる。というか、50年前から比べれば、インターネットやAIなどが生まれて技術革新は進んだけど、全世界的な問題は何も解決出来ていないしね。。


最後の3冊目は、前にもこのブログで触れた、元ゴールドマンサックスの役員だった田中渓氏が、Ⅹ上で紹介していた、浅井リョウの最新作の「イン・ザ・メガチャーチ」。


この本は、アイドルの推し活に没入して行くオタクの心理を描いているのだけど、推し活にハマって行く人間の心理を極めて的確に描いていて、別にオタクや推し活に興味が無い私のような者にも、非常に興味深く読めました。

ここ1年くらいで読んだ本の中でも、一番オモシロかったんじゃないかな。。

本の登場人物の台詞で、「時代そのものが厳しくなって行く中で、推し活は趣味というより福祉に近い存在なっているのではないか」というのが出てくるけど、読み進めていくと確かに、推し活で救われている人が、今の世の中にはいっぱい居るような気もするので、表現としては上手く言い当てているのではないか。

この本の中で、オーディションで選抜された男性アイドルグループを売り出すレコード会社側の「熱狂的な推し活ファン」を誘導していく戦略が描かれているけど、如何にファン層の視野を狭くして、推し活動に没入させるかが重要という話が展開されていて、それがアメリカのキリスト教の教会で信者を増やす為に最近行われている「チャーチ・マーケティング」という洗脳型マーケティング手法を活用したものであるという説明が、登場人物の会話の中で暗に出てくる。

そこで、この本のタイトルの「イン・ザ・メガチャーチ」の意味が分かる。

余談だけど、この「チャーチ・マーケティング」の手法を某◯政党などが活用しているという説を唱えている人も居るらしい。。

浅井リョウの本は初めて読みましたが、ストーリーが非常によく出来ていて、また登場人物の心理的描写も非常に細かく描かれていて引き込まれる感じもあり、一気に読んでしまった。

で、上記3冊はバラバラに読んだ本ではあるが、少なくとも「イン・ザ・メガチャーチ」と「成長の限界」を読んだ後で、いずれも「人間の視野」がたまたま題材の一つになっている事に気付いた訳です。。

拡大解釈すれば、「原因と結果の経済学」の方も、データを使う側の視野によって原因と結果の関係性が変わって来るという意味では、繋がりはあるとも言えるか。。

話は戻りますが、浅井リョウ、スゴい作家だね...

オススメです。。

自分もこれ以上「視野」が狭くならないように、また他に良さげな本を探して読もう、と思った神無月の月始めでした。。



レオンな生き方

愛犬レオンとサッカーをこよなく愛し、たまにパラグライダーで空を飛んでるバブル世代が、趣味や世の中の出来事など好きなことを語ります

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